クオリティ部ユーザーサポートグループの岸本です。
スタンバイでは、開発方針にユーザーファーストを掲げ、ユーザー視点に立ち、ユーザーのための機能開発の実現を目指しており、FY23よりVOCに触れる機会の増加を目的とした取り組みを開始しています。まだ道半ばではありますが、ここまでの経緯と得られた効果について、紹介します。
(開発方針の記事紹介)
techblog.stanby.co.jp
1. はじめに
VOCとは
「Voice of Customer=顧客の声」の略で、「企業の製品やサービスを利用する顧客の正直な意見・感想」を指す言葉です。スタンバイには、仕事を検索されている方々から、問い合わせフォームなどを通じてサービスに対する様々なご意見やご要望が集まっています。
VOCの重要性
私たちが提供する「スタンバイ」を利用するユーザーの中にはアルバイトの仕事を探されている方やシニアの方も多く、必ずしも社内のメンバーと一致するわけではありません。実際のユーザーは私たちとは異なる視点や価値観を持ち、異なる環境でサービスを利用しています。そのため、社内の感覚だけで判断してしまうと、ユーザーの本当のニーズとかけ離れた機能や改善を進めてしまうリスクがあります。
こうしたズレを防ぐため、VOCを定期的に収集し、誰もが日常的にユーザーの声に触れられる環境を整えることを目指しました。ユーザーの生の声をもとに課題を特定し、解決策を考えることこそ、スタンバイの提供価値の向上につながると考えています。
VOCの取り組みを始めた背景
スタンバイでは、FY23以前からユーザーからの問い合わせ対応を行い、プロダクト開発組織に対して定期的にレポーティングを実施していました。しかし、以下のような課題があり、VOCの活用には至っていませんでした。
- 「前月の問い合わせ内容」といった過去の「点」の情報しか提供されていなかった
- 問い合わせしたユーザーの属性が不明であり、サンプル数も少なかった
この課題を解決するため、ユーザーの声を最も直接受け取るカスタマーサポート(CS)部門をプロダクト部門内のクオリティ部に統合し、VOCをより深くプロダクト改善に活かせる組織体制へと進化させました。
2. モニタリングと分析運用の開始
① モニタリングと分析運用の開始
VOCのモニタリング基盤を整えるため、以下の3つのチャネルを整理しました。
- 問い合わせ窓口:ユーザーからの相談や質問を受け付ける
- 求人情報への問題報告:問題のある求人を報告し、対応する
- ユーザー満足度アンケート:検索結果に対する評価を収集する
当初、プロダクト部門に共有されていたのは「問い合わせ窓口」からのVOCのみで、それ以外のデータは他部門が必要に応じて確認する運用でした。しかし、これらのVOCはすべて連動しているため、全体を包括的にモニタリングできるよう、蓄積データを分類し、月ごとのVOC傾向を可視化するための分析基盤を構築しました。
②FAQのアップデート
実際に声として集まってくる情報だけでなく、FAQ(ヘルプページ)のアクセス数もVOCの一環としてモニタリングを開始しました。当初立ち上げ段階であったFAQのコンテンツを充実させながら、VOCチャネルとしての運用も兼ねられるよう、アクセス分析基盤も整備しました。
FAQのどの記事にユーザーからのアクセスが集まっているかという情報を基にどんな問題を抱えるユーザーが増減しているのかをモニタリングし、他のチャネルの傾向と連動している問題の発見に活用しています。
③ユーザー満足度アンケートの分析
「問い合わせ窓口」と「求人情報への問題報告」は、その後のオペレーションまで運用されている一方で、「ユーザー満足度アンケート」は必要なタイミングで改善すべき問題を抽出するための情報源として活用していました。
毎月5,000件程度の投稿があり、アンケートの回答/コメントが検索時のログとセットで蓄積されていたため、まずは目の前にあるデータの分析から着手し、アンケートへの回答から読み取れる問題についてのフィードバックを開始しました。
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3. 収集方法のリニューアル
①ユーザーが意図通りの回答を選択できるフォームにリニューアル
ユーザー満足度アンケートのフィードバックを継続する中で、ユーザーの選択された項目とコメントに書かれている内容の一致率が50%を下回っていることに気づきました。そのため、集計の際に1点ずつ回答とコメントを目視で確認して、集計する作業が生じていましたし、そもそも、このままのデータを基にモニタリングを行うと、誤った解釈でVOCが共有される懸念がありました。
そこで、過去のアンケート結果により、アンケートへの回答の傾向は把握できていたため、
ボリュームの多い回答を細分化して、より具体的な回答を選択できるアンケートフォームへとリニューアルを行いました。
②集計ログの追加
ユーザーがどのようなクエリで検索して、どのような検索結果を見て、回答しているのかまで追跡したい場合に備えて、集計ログの追加実装を行いました。
例えば、
・検索クエリに対して、表示された求人件数
・流入時から回答するまでの検索回数
・検索時に表示されていた求人内容
等、どのような状況から回答しているのかを深掘りするためのデータを増やしました。
直近では、ABテスト時のバケットごとにアンケートの回答傾向をモニタリングして、社内でフィードバックしています。
4. 社内へのVOC共有の強化
VOCを全社的に浸透させるため、プロダクト部門全員が参加する全体会議でVOCを共有する場を設けました。
目的
- 全員が毎月必ずVOCに触れる機会を確保し、ユーザー視点を維持する
- 経営層にも共有し、意思決定にユーザーの声を反映する
- 重要な課題は繰り返し伝え、認識を深める
また、Slackに「VOCチャンネル」を設立し、リアルタイムで最新のVOCを共有する運用を開始。現在ではほぼ全員がチャンネルに参加し、投稿に対してリアクションが集まっています。不満の声だけでなく、好意的な評価をいただいたVOCも発信することで、メンバーのモチベーション向上にも一定寄与できています。
こうした取り組みによって、プロダクトに関わる全メンバーが、日常的にユーザーの声を意識する環境を構築できました。実際に、社内からは以下のような声が寄せられています。
「スタンバイのユーザーが何に困っているのかを想像しやすくなりました。」
「思考のネタになり、視野が広がるので助かります!」
「自分の業務がユーザーにどう結びついているのかイメージしやすくなった!」
5. 今後の展望
VOCを活用したデータドリブンな意思決定へ
VOCのモニタリングを継続的に行い、ユーザーの声から読み取れる主要な課題を一通り把握することはできました。また、インシデント発生時や新機能リリース後のネガティブな反応を即座に検知し、プロダクト部門へフィードバックする体制も整いました。
しかし、今後はVOCを単なるフィードバックとしてではなく、定量的に評価し、ROI(投資対効果)を示せる形で活用することが求められます。
クエリ分類ごとの課題を明確化
スタンバイのユーザー層は多岐にわたり、それぞれ異なる課題を持っていることが挙げられます。そのため、VOC全体の傾向だけでは、要因の特定が難しい場合が多いです。より具体的な要因を探るために、ユーザー属性ごとの違いを把握し、どの課題が最も影響力が大きいのかを明確にする必要があります。
VOCとユーザー指標を結びつけた分析
VOCとユーザー指標の関連性を調査し、VOCに現れた課題が実際の利用データやKPIにどのような影響を与えているのかを分析することが不可欠です。これにより、VOCが示す問題が、ビジネスにおいてどれほどのインパクトを持つのかを具体的に数値で示せるようになり、課題の大きさと重要度を測れます。
また、これらをスピーディに分析するために、グループ内にデータ分析を行えるメンバーをアサインしました。分析作業を他部署に都度依頼していると、スピード感が失われます。議論を進めながら仮説立てから分析をスピーディに運用できる体制をとっています。
6. おわりに
これまでの取り組みを通じて、ユーザーの声を可視化し、意思決定に活かす基盤を整えてきました。
今後はさらに一歩進め、あらゆる機能やサービスのリリース後の反応をVOCから素早く読み取れる体制の構築を目指します。これにより、ユーザーのリアルな反応を即座にキャッチし、改善サイクルをより迅速に回すことで、プロダクトの価値向上につなげることが可能になります。
VOCは、重要なユーザーフィードバックであり、プロダクト改善の原動力です。
今、ユーザーが何に困っていて、何を求めているかについて、VOCを通じて継続的に収集・分析し、ユーザーにとって本当に価値のあるサービスを提供することを目指します。
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